戦術を伝えて実行させるサッカーの名監督
サッカーにおいて、監督は重要な役割を担います。サッカーは色々なボールゲームの中でもグラウンドが広く、多数の選手が関わるので勝利のために戦術を持って臨む必要があるスポーツです。その戦術を考えるのが監督で、チームは監督の戦術を実現させながらゴールを目指します。ただ選手を選び、ポジションを決めてグラウンドに送り出すだけが監督の仕事ではありません。
一方、タイトルをチームにもたらすような名監督が、常に目新しい戦術を生み出すのかといえばそれも違います。むしろ名監督ほどオーソドックスな戦術を得意とするケースが世界各国で見られます。それは名監督の条件が新戦術を生み出すことより、選手一人一人に戦術を深く伝え遂行させる戦術実行力にあるからです。ネットで世界中のサッカー情報が手に入る現代では戦術を研究し、開発するのは平凡な監督でも出来るようになりました。問題はその後です。監督の頭の中にある戦術を選手にどう伝え実行させるか、その手法が名監督の条件になっています。名監督は毎日の練習メニュー全てに、自分の戦術につながる要素を取り入れます。かつて日本代表監督を務めたイビツァ・オシムさんは、練習の最初から通常よりはるかに多い7色のビブスを使いました。パスワークを多用する自らの戦術を浸透させるためで、簡単な練習からすでに戦術実行のための布石を打っていたのです。
また、自分のカリスマ性を利用する名監督もいます。気性の荒いタイプが多いサッカー選手には、戦術よりも自分の得意なプレーを優先させたり、戦術ルールを守らない者がいます。そうしたタイプに対し、自分が現役だった時のエピソードや勲章を持ち出して俺のようになりたかったら戦術を守れと発破をかけるのです。バルセロナで伝説のドリームチームを作り上げたヨハン・クライフは、カリスマで選手を説き伏せた監督の代表格でしょう。
名監督がいるクラブは試合だけでなく、練習から戦術実行力が発揮されるため、主力が怪我や移籍で抜けてもその穴を別の選手で埋めることが出来ます。試合中に不測の事態が起きても、選手たちに監督の狙いが伝わっているので、こういう時はこうすればいいんだと選手自ら戦術をアレンジしたプレーも可能です。このように、戦術を深く的確に伝える力のある監督がチームを強くします。一度名監督の元で鍛えられた強さは監督が去っても続くことがあり、歴代の名監督が伝え築いた戦術を積み重ね、財産にしたクラブが強豪と呼ばれるようになるのでしょう。